大学の研究評価に関しては、論文、特許等の多寡等を評価してきた。このような単純な評価枠組は大学改革や政策改善に結びつきにくいので、政策的インプットから成果の社会的還元にいたるカスケード型の評価モデルを考案した。 1.評価モデルの構築と検証 研究代表者等の所属大学を対象として、公開データを中心にデータを収集し、研究資源配分、研究基盤形成、学術的貢献、人材育成、アクセス機会の提供、技術移転等の相互関係に配慮したカスケード型の評価モデルに結びつけ、評価モデルの妥当性、分析手法、表現方法を検討した。 産学連携関係等の非公開データに関しては、守秘義務に違反せず、かつ分析に供しうる匿名化方式を開発したが、ミクロ(個別研究室)レベルで個別評価指標の相互関係を把握することは不可能ではないものの、個別的であるがゆえに、個別大学レベルの少数データでは匿名性の担保が困難であり、公開できるような評価結果の表現は困難であることが判明した。そこで、メゾレベルでの分析方法についても検討した。 2.研究の総括 ミクロレベルの評価は困難であるが不可能ではないこと、それを基礎としてマクロレベルでの評価分析につなげる方法論はある程度明らかにできた。ただし、実現のためにはある程度の強制力もしくは多数の大学・研究者の自発的参加が前提となる。ちょうど、米国連邦政府機関では2010年6月にSTAR MEXTRICSという評価活動が開始されたが、その構想は本研究が想定していた評価モデル及びデータ収集方法に非常に近いことがわかった。そこで、STAR MEXTRICSについても調査し、評価モデルとその実現について総合的に検討した。今後は、評価結果の可視化が課題となろう。
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