平成22年度は、引き続き共同発明ネットワークの分析に取り組んだ。すなわち、特許データにおける「発明者情報」の不確実性を克服するために、各種パラメータを組み合わせた発明者情報の名寄せを行った。これは、氏名の文字情報、住所の位置情報(市町村単位)、技術分類情報、共同発明者情報、引用情報、をパラメータ化し、ある閾値以上のものを同一人物として名寄せするアルゴリズムを開発し実行したものである。この作業の途中経過を報告し、諸外国の研究者と意見交換を行うために、欧州(ウィーン)において開催された国際会議(Patent statistics for decision making)に参加しら欧州の状況等を調査したところ、欧州においても同様の研究が進行中であることが判明した。さらに、発明者情報のみならず出願人情報の名寄せを東京大学の元橋一之教授と共同で実施し、欧州の出願人に関して豊富な知見を持つイタリア・カメリーノ大学のGrid Thoma氏と共同で日欧の特許出願人の名寄せとその内容の分析を行った。 さらに、科学技術研究調査のデータを用いて、産学連携(企業から大学への研究資金の提供を代理変数とした)が企業の基礎・応用・開発研究に与える影響をGranger Causalityの視点から分析し、産学連携が数年のタイムラグを経て企業の研究活動に影響を与えていることを明らかにした。また、科学技術振興機構(JST)のERATOやCRESTなどの資金を受けた研究者が、共著や共同発明のネットワークをどのように変化させるのかを分析するため、JSTとの共同研究を通じてデータ取得の試みを開始した。
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