平成24年度は、前年度に引き続き漢字表記の日本人名の名寄せについて、特許の発明者情報を用いたスコア方式のアルゴリズムを検討した。特に、広範囲の名寄せの基盤となる“True Positive”として利用することが可能な、出現頻度の低い氏名のみからなるサンプルを構築し、様々な指標の出現頻度を明らかにした。これらの指標の頻度分布に基づいて、今後、より合理的なスコア方式の名寄せアルゴリズムを開発することが可能になるものと期待される。 さらに、この名寄せの成果の一部を利用すると共に、科学技術振興機構(JST)の協力を得てJ-GLOBALデータベースを利用し、CREST補助金を受給した研究者が科学論文の共著ネットワークにおける中心性をどのように変化させたのか詳細な分析を行った。具体的には、代表的な5種類の中心性指標(次数中心性、2-step reach中心性、近接中心性、媒介中心性、固有ベクトル中心性)について、回帰分析を行ったところ、CREST受給前後において、各研究者の中心性指標に違いは見られないという事が示された。ただし同時に、共同研究者に比べて研究代表者の中心性が、CREST受給に関わらずやや高いという結果が得られた。 発明者の名寄せの方法論や途中結果について、欧州および米国の研究者と意見交換を行うため、この分野で著名な国際会議である”Patent Statistics for Decision Makers 2012” (2012年11月、パリで開催)に参加し、欧米の研究者との情報交換とディスカッション、および将来的な共同研究の可能性等について相談を行った。
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