研究概要 |
近年、多くの国に共通して学生が「学習」している「証拠」を示すことを大学は強く求められることとなった。高等教育のユニバーサル段階にいち早く達した米国では1980年代から州立大学を中心にしてアカウンタビリティの一環として学生の学習のAssessment(査定)が課題となっていた。そのような動きが最高潮に達したのは2006年の教育省長官のマーガレット・スベリングスが、アクレディテーション団体にアクレディテーションの際に、学習成果の査定を強く求める法律改正を求めた時である。学習成果の査定の義務化は回避されたが、多くの大学が自主的にCLA(Collegiate Learning Assessment)などの活用を開始し、それぞれの大学の教育の有効性の証拠として利用している。さらに、15歳対象の国際共通学力テスト、PISAを実施しているOECDも、大学卒業者に国を超えて活用できる共通テストの研究開発プロジェクト、AHELO(Assessment of Higher Education Learning Outcomes)を開始した。 共通テストの導入には懐疑的な高等教青関係者は多いが、今後、我が国も含めて学習成果の挙証を求める圧力は高まりこそすれ、弱まることはないと思われる。 我が国でも、高等教青における学習成果の査定に取り組む必要があるが、これまでは学習の査定(アセスメント)は,いわゆる成績評価にとどまり、査定そのものの理解は不十分であり、さらに、学習成果(ラーニング・アウトカム)に関する理解も必ずしも満足できる状態ではない。今後、学生の学びの支援、大学教育の改善、そして説明責任に十分資することが可能な、査定に関する議論の深まりと、共通テストの開発、ルーブリックを活用した学習成果の査定に関する具体的な手法の開発が望まれる。
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