研究概要 |
国立大学法人法の成立により、日本の学長選考は学長選考会議が行うこととなった。その後の展開のなで、学長選考会議が意向投票を覆し混乱が生じている大学も少なくない。学長選考はどのような原理・制度のもとで行われるべきものであろうか。 また,大学法人化以前の大学意思形成をボトムアップ型、それ以後の意思形成をトップダウン型と呼べば、このまったく異質な古いものと新しいものをどう調整するかで,大学においても混乱が生じ,いまだコンセンサスができていない。この両者を調整して安定的な管理運営を実施することが、現在の日本の大学において重要な課題であると思われる。本研究は、日本における大学運営の実態がどのように形成されつつあるかを一方において分析しつつ、他方で、アメリカ、オーストラリア、ドイツの法がこれらをどのような原理のもとにどのように調整しようとしているかを分析しようとするものである。 本年度は,これらの国における資料を収集すること,そして日本の大学において生じている問題を調査・分析することを課題とした。 その中で,高知大学学長任命取消訴訟について,実体調査を行うとともに,この訴訟の憲法学的意味を検討し,「高知大学長選考問題学習会」において「高知大学学長任命取消訴訟事件の憲法学」と題する報告を行った。 また,今日取り組まれている大学改革を学問の自由,大学の自治からどのようにとらえるべきかを検討した,「「大学改革」と憲法原理」と題する論文を発表した。さらに学会において「大学の公共性と学問の自由」と題する報告を行い,これまでの憲法学における大学の自治論の再検討の必要性について検討した。
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