1.神経因性疼痛マウス(Seltzerモデル)において一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害剤L-NAMEを脳室内投与すると疼痛症状が緩解する。下行性ノルアドレナリン神経の関与とその下流の脊髄内疼痛抑制機構を検討した。特に、L-NAMEの脳室内投与後の機械アロディニア緩解作用に対し、脊髄内に前投与したα_2-アドレナリン受容体阻害薬、ムスカリン受容体阻害薬、さらにNOS阻害薬が阻害作用を示した。すなわち、下行性NA神経活性化後に、脊髄内下流シグナルとしてα_2-アドレナリン受容体-ムスカリン受容体-NO産生カスケードが鎮痛に関与することが明らかとなった。 2.選択的セロトニン再取り込み阻害薬フルボキサミンの鎮痛作用機序をシナプスレベルで解明するために、後根を付けた脊髄スライス標本を成熟マウスから作製し、根刺激で誘発する単シナプス性興奮性シナプス後電流(EPSCs)や自発性あるいは微小シナプス後電流(sEPSCsやmEPSCs)に対するフルボキサミンの作用を検討した。フルボキサミンはA-線維やC-線維性のEPSCsを抑制したが、sEPSCsやmEPSCsの頻度を増強させた。この増強は介在性神経終末からの放出頻度増強を示していると考えられ、一次求心性神経終末からのmEPSCsに対する検討はさらに継続して検討する。 3.ラットの脊髄後角から記録するC-線維性フィールド電位とその長期増強(LTP)に対して、N型Ca^<2+>チャネル阻害薬のω-CgTxは抑制作用を示したが、LTPに対する抑制作用の方が低濃度から現われた。また、神経因性疼痛モデル(Chungモデル)ラットのような既に感作が生じていると考えられる状態ではbasalレベルのC-線維性フィールド電位が低濃度からのω-CgTxに抑制された。また、P/Q型Ca^<2+>チャネル阻害薬はLTPの誘発に対して抑制作用を示すことも明らかとなった。
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