1. ラットにsham水泳ストレス、強制水泳ストレスを繰り返し負荷することにより、ホルマリン注射後の疼痛反応が増強することを確認した。次いで、イボテン酸を吻側延髄腹内側部(RVM)に脳内微量投与し、RVMの神経細胞を破壊した。これらイボテン酸投与群では、強制水泳ストレス負荷によるホルマリン注射後の疼痛反応の増強は認められなかった。これらデータは、慢性ストレス後の痛覚過敏に下行性疼痛調節系からの入力が関与していることを示唆するものである。Neuro 2010(第33回日本神経科学大会)で発表し、論文としてまとめ、Brain Res. 1329(2010)103-112に掲載された。 2. Rat Tph2遺伝子断片を含むshRNAプラスミドをエレクトロポレーション法を用いてラットのRVM神経細胞に遺伝子導入を試みた。現在、電気刺激電極を改良し、刺激強度など条件を検討中である。 3. 慢性拘束ストレス負荷後、RVMを摘出しWestern blotを行った。慢性拘束ストレス群ではRVMにおいてGAP43蛋白質分解フラグメントが増加する。という結果が得られ、第87回日本生理学大会において発表した。さらに、中脳中心灰白質において、慢性拘束ストレス負荷後、アストロサイトのマーカーであるGFAPが減少するというデータを得て、現在、検討中である。 4. コントロール、強制水泳ストレス負荷ラットの足底にCFAを注射し慢性炎症を惹起した。強制水泳ストレス負荷ラットではコントロールに比し、炎症性疼痛が増強するというデータが得られた。脊髄、RVM、さらに、大脳皮質などの高位中枢でのp-CREB、p-ERK、c-fosの発現を免疫組織学的に調査した。強制水泳ストレス負荷ラットの脊髄ではp-CREBが増加するというデータを得て、現在、検討を加えている。
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