| 研究概要 |
子宮内膜症は,慢性骨盤痛・月経困難症・性交時痛などの急性および慢性疼痛を来す代表的疾患の一つであり,発症頻度も高く,女性のQOLを大きく損なう疾患である.子宮内膜症の病態は慢性炎症としてとらえることができるが,その慢性炎症によって生じる疼痛は子宮内膜症患者にとって大きな問題であり,疼痛という臨床症状の緩和は大きな臨床的テーマである本研究は,子宮内膜症により発症する疼痛の部位や疼痛発症機序に関連する分子機序を解明することを目的として施行した.本年度は,疼痛発症部位と疼痛の程度を理学的所見および疼痛の評価スケール(VAS:visual analog scale)により評価した子宮内膜症患者の子宮内膜症部位(子宮内膜症性嚢胞,子宮腺筋症,および腹膜病変など)の凍結切片およびmRNA解析用の検体を採取するとともに,月経周期,rASRMスコアなどが明確に記載された患者の腹水を採取し保存した.今後も継続して,症例数を蓄積する予定である.疼痛関連遺伝子群としては,NGF,CTGFの免疫染色およびreal-timePCRによるmRNAの定量評価系を確立した.また,それ以外の疼痛関連遺伝子群として,ロイコトリエン合成経路であるリポキシゲナーゼ(LOX)に注目して解析を開始した.LOXは炎症反応やアレルギーなどと関連性の深い脂質メディエーター合成経路であるが,これまでその合成経路と子宮内膜症の関連性は指摘されてこなかった.LOX合成経路のなかで5-LOX,12-LOX,15-LOXのreal-time PCRによる定量法を確立し,同時に免疫染色系も確立した.
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