研究課題
内因性痛み物質であるブラジキニン(BK)を繰り返し投与するとBK B2受容体の脱感作がおこる。プロスタグランジンE2はEP3受容体を介してこの脱感作を減弱し、結果として痛みの増強をおこす。本研究は、このEP3受容体の活性化がBK B2受容体の脱感作の減弱を導く細胞内メカニズムを解明することを目的としたものである。昨年度は、EP3アゴニストあるいはPKA阻害剤H-89がBK B2受容体の内在化を抑えるという結果を得た。今年度は、BKにより誘起されたBKB2受容体の内在化をB2受容体を介した[^3H]BKの細胞内移行として測定し、[^3H]BKの細胞内移行に対するEP3アゴニストの作用をH-89の作用と比較して調べた。GFP-BKB2受容体とEP3受容体を安定的に共発現するCHO細胞株において、[^3H]BKを15分間投与した場合にB2受容体を介して細胞内に移行する[^3H]BKの割合は、H-89により減少した。このことから、BKを結合したB2受容体が細胞内移行する過程にはPKAの活性化が関与し、細胞内移行の阻害により脱感作が減弱されると考えられる。EP3アゴニストでも細胞内移行する[^3H]BKの割合が減少すると予想したが、予想に反して細胞内に移行するBKの割合は、無処置群と変わらなかった。EP3アゴニストによって、BK受容体の細胞膜への再埋め込み(リサイクリング)が促進されると推測される。EP3受容体を介したBK B2受容体の脱感作の減弱は、プロテインキナーゼA阻害剤による脱感作の減弱とは、少なくとも一部は、異なるメカニズムによることが判かった。本報の結果は、EP3アゴニストがBKB2受容体のリサイクリングを促進し、BK反応の脱感作の程度を減少させる、すなわちBK反応を増強する可能性を示唆するものである。
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