研究課題
内因性痛み物質であるブラジキニン(BK)を繰り返し投与するとBKB2受容体(B2R)の脱感作がおこる。プロスタグランジンE2はEP3受容体(EP3R)を介してこの脱感作を減弱し、結果として痛みの増強をおこす。本研究は、このEP3Rの活性化がB2Rの脱感作の減弱を導く細胞内メカニズムを解明することを目的としたものである。緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識したB2RとEP3Rを共発現したCHO細胞において、細胞膜部分に存在するGFP-B2Rは、BK投与4~10分後に減少し、この減少がEP3Rアゴニスト(ONO-AE-248)によって抑えられる、すなわち、B2Rが細胞膜部分に留まるように見えることを先に報告した。BKはB2Rと結合して、B2Rとともに細胞内へ移行するので、細胞内移行したBKの総量は、BKと結合して細胞内に入ったB2Rの延べ量を反映すると考えられる。そこで、GFP標識B2RとEP3Rを安定的に発現するCHO細胞において、^3[H]BK(4nM)を15分間投与した場合の^3[H]BKの細胞内移行に対するONO-AE-248(1μM、5分間)の影響を調べた。また、受容体インターナリゼーション阻害作用が知られるコンカナバリン(Con)A前投与(0.5mg/ml、15分間)の場合の影響も調べた。BK投与後のB2Rの細胞内移行は、ConA前投与により顕著に減少したが、ONO-AE-248投与により、その減少が減弱した。ConAは、B2Rの細胞内移行を阻害するが、EP3Rアゴニストは、B2Rの細胞内移行と細胞膜へのリサイクリングを促進する作用があることが分かった。プロスタグランジンはEP3Rを介してB2Rの細胞内移行とリサイクリングの両方を促進することによりBK反応を増強する可能性が示唆された。
すべて 2011 2010 その他
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Neuroscience Research
巻: 68(Suppl.1) ページ: e162
http://www.kinjo-u.ac.jp/kozaki/index.html