不動化による疼痛発生は、不活動そのものが影響している可能性があり、この疼痛発生を抑制するために、不動前や不動中の運動の影響を探ってきた。昨年度までに、不動期間中にトレッドミル走を行わせ、疼痛行動を検討してきたが、むしろ疼痛発生を助長させてしまっていた。この時のL4~L6後根神経節細胞におけるサブスタンスP(SP)の発現は、より小型の細胞に集中する変化が認められ、今年度はさらにCGRPについても検討した。その結果、疼痛行動が増加したトレッドミル群では鎮痛傾向だったストレッチ群に比して中型細胞でCGRP含有細胞数が有意に増加した(p<0.05)。 また、不動前のトレッドミル走による先取り鎮痛効果の検討を行ったが、疼痛行動は、事前運動しない群に比して抑制された。特に皮膚痛覚閾値だけではなく、より深部の疼痛閾値にも影響を与えることが明らかとなった。しかし、神経節細胞におけるSP発現には影響を与えなかった。CGRPや他の疼痛関連受容体の影響については検索中である。 さらに不動期間中に、トレッドミル走よりは低強度の運動として自由運動を行わせた群を作成し疼痛行動を調べたところ疼痛発生がわずかながら抑制される傾向を示した。 これらのことから不動化による疼痛発生には、不動化状態に陥る前までの日ごろからの運動習慣の有無や不動化状態に陥った場合でも低強度の運動の可否が影響を与え、これらを行うことで、不動化による疼痛発生をある程度予防することができると考えられた。
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