研究課題/領域番号 |
20602016
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
|
研究分担者 |
吉田 繁 近畿大学, 理工学部, 教授 (60145224)
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
|
キーワード | ニューロパチー / 神経障害性疼痛 / 生体内ガス / 硫化水素 / T型Ca^<2+>チャネル / 痛み / 神経因性疼痛 / siRNA |
研究概要 |
神経因性疼痛の病態への硫化水素の関与を明らかにするため、平成20年度は、第5腰神経切断術により誘起される神経因性疼痛ラットモデルを用いた基礎的研究と、異波長サイン波刺激により誘起される侵害受容反応を指標とした実験系の確立に取組んだ。 1. 第5腰神経切断神経因性疼痛モデルにおける各種薬物効果: 本モデルにおける痛覚過敏が硫化水素合成酵素阻害薬の前投与により阻止されることを見出し、また硫化水素の標的分子の1つであるT型カルシウムチャネル阻害薬が、既に確立した痛覚過敏を抑制することを証明した。 2.Ca_v3.2T型カルシウムチャネルノックダウンの効果:Ca_v3.2に対するアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドまたはsiRNAをラットの脊髄くも膜下内投与し、一次知覚神経のCa_v3.2をノックダウンすることに成功した。ついで、Ca_v3.2のノックダウンにより硫化水素供与体の投与による一過性痛覚過敏および第5腰神経切断モデルにおける持続性痛覚過敏が抑制されることを証明した。 3. 第5腰神経切断神経因性疼痛モデルにおける各種蛋白発現量の変化:第5腰神経切断モデルでは、脊髄後根神経節細胞においてCa_v3.2蛋白の発現誘導が起きていることを見出した。 4. 異波長サイン波刺激による侵害受容反応に及ぼす硫化水素の効果:硫化水素は、C線維を特異的に刺激する波長のサイン波刺激に対する感受性を増大させることを、行動薬理学的手法と免疫組織化学的手法により証明した。 以上の結果より、第5腰神経切断による神経因性疼痛の病態に硫化水素とその標的分子であるCa_v3.2T型カルシウムチャネルが関与すること明らかにすることができた。また、異波長サイン波刺激を用いた実験系を確立し、硫化水素がC線維に作用する可能性を示唆する知見を得たことより、今後、神経因性疼痛モデルでの検討を行っていく予定である。
|