研究概要 |
炎症性疾患において、局所に多数の炎症性メディエーターが放出され、その近傍にある感覚神経を刺激あるいは感作させることで、炎症性疼痛が引き起こされる。本研究は炎症性メディエーターによる疼痛関連受容体の機能調節に着目し、炎症性疼痛の発症メカニズムにおける疼痛関連受容体感作のメカニズムを解明することを目的とする。H22年度の研究期間内に昨年度続き以下の実験を行った: 炎症性メディエーターによるTRPA1とP2X3チャンネル機能調節のメカニズムを解明した (1) まず、transfectしたHEK細胞にPAR2アゴニストなどの炎症性メディエーターを処理し、免疫沈降法を用いて、TRPA1とP2X3のタンパク質を抽出し、セリン、スレオニンのリン酸化抗体を用いたWestern Blot法で、炎症性メディエーターによるリン酸化変化の有無を検討した。結果は予測に反してリン酸化変化は認められなかった。(2)同じくtransfectしたHEK細胞を用い、TRPA1とP2X3の膜たんぱくを抽出し、Western Blot法にて炎症性メディエーターによるタンパクの膜移行の有無を確認した。TRPA1について膜移行が確認でき、PAR2シグナルによる機能増強のメカニズムの一因であることを示唆した。P2X3について有意な膜タンパクの変化が認められなかった。 In vivo疼痛行動実際を用いて、疼痛発症における細胞内シグナリングの関を明らかにした パッチクランプ法で確認できたチャンネル活性増強に関わる細胞内シグナリングをin vivoで確認した。ラットの足裏にAITCやα,β methylene-ATP注射による疼痛行動は、PLC, PKA, PKCのシグナルによって増強されるかどうかを確認した。何れのキナーゼのinhibitorおよびactivatorの単独投与によって疼痛行動が有意に変化しなかったが、PKAとPKCのactivatorの協働増強効果が認められた。
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