研究概要 |
反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)が神経因性疼痛に及ぼす影響を解析するため,初年度はrTMSが機械的感覚刺激に及ぼす影響を、ddYマウスならびにてんかんモデルELマウスを用いて検討した. 【方法】(1)ddYマウス群(n=20)をコントロール群(n=7)、rTMS群(n=7)、拘束群(n=6)に分けた。まず2週間各マウスの機械的非侵害刺激に対する反応をvon Freyフィラメント刺激に対する逃避反応で評価した。3-6週目では、週の前半2日間にrTMS群はrTMS(運動閾値の120%の強度、20Hz,1000発刺激/日)を、拘束群は10分間の身体拘束をおこなった。コントロール群はいずれの処置もしない。週の後半(処置後少なくとも2日おいて)にvon Freyフィラメント刺激に対する逃避反応閾値を評価した。 (2)ELマウスはてんかん発作をきたすが、rTMSが発作を抑制することを我々はすでに確認している。そこでELマウスの機械的非侵害刺激に対する反応がrTMSによって変化するかを検討した。rTMS群(n=5)、拘束群(n=5)に対して、ddYマウスと同様のスケジュールで比較した。 【結果・考察】(1)ddYマウスのコントロール群では、von Freyフィラメントの刺激強度0.4gまではまったく逃避反応はみられなかった。0.6gにて20%、以後強度が強くなるに従って反応個体数は増加し8gでは約100%となった。rTMS群、拘束群ともに同様の傾向であり、3群間での有意差はみられなかった。このことは、正常ddYマウスではrTMSは悪影響を及ぼさず安全であることを示している。 (2)ELマウスでは、刺激強度0.07gから逃避反応を示す個体がみられ、0.16gでは50%、1.4gではすべての個体が反応していた。このことはELマウスの感覚過敏性を示唆する。3週目以降拘束やrTMSを開始したところ、拘束群では約20%ほど反応個体数が減少しているが、rTMS群では減少率は50-70%に達していた。拘束の影響を差し引いてもrTMSが感覚過敏を抑制したことを示している。初年度の研究によりELマウスのような中枢神経系の過剰興奮がみられる場合にはrTMSは感覚過敏状態を抑制できる可能性が明らかとなった。次年度は坐骨神経結紮モデル動物をもちいての検討を行っていく予定である。
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