研究概要 |
平成20年度は主に、サンプル収集及びGIRKチャネル遺伝子多型の包括的関連解析を進めた。 15-60歳の外科患者のうち、下顎形成外科手術後において鎮痛薬を投与された術後疼痛治療患者を対象としてサンプル及び臨床データ収集を行ったが、本年度は臨床データとともに70〜80ほど収集され、既に所属先の東京都精神医学総合研究所に保管されているものと併せて合計270前後となった。 ヒトにおける脳型GIRKチャネルのGIRK1〜GIRK3のサブユニットのうちまだ調べられていないGIRK1の遺伝子の全エキソン及びプロモーター領域、エキソンとイントロンの境界領域などに関してダイレクトシーケンスにより多型探索を行ったところ、プロモーター領域に4個、エキソン1に1個、またエキソン3に1個、合計6個の一塩基多型(SNP)を同定した。その後連鎖不平衡解析を行い、プロモーター領域の2個及びエキソン1の1個のSNPの間において絶対連鎖不平衡(D'=1,R^2=1)となっていることを認めた。ところが、これらのSNPはいずれも対立遺伝子頻度は5〜6%程度以下で比較的低く、充分な統計的検出力を得られない可能性が高いため、関連解析は行わなかった。 また、GIRK2におけるG-1250A及びA1032G多型に関してPCR-RFLP法により遺伝子型を決定し関連解析を行ったが、鎮痛薬感受性との間に有意な関連は認められなかった。 一方、GIRK3のC-968G、C1339T、C1781T、C1817T、G2069Aの5SNPを対象としてPCR-RFLP法及びダイレクトシーケンスにより遺伝子型を決定し関連解析を行ったところ、非同義のC1339T多型が術中・術後の鎮痛薬総投与量との間に有意な関連を認めた。 現段階ではその分子メカニズムは未解明であるが、GIRK3のC1339Tは鎮痛薬感受性のマーカー多型となる可能性が考えられた。
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