研究課題
平成21年度は主に、サンプル収集及びGIRKチャネル遺伝子多型の関連解析、またGIRKチャネル遺伝子多型が影響する機能の解析を進めた。15-60歳の外科患者のうち、下顎形成外科手術後において鎮痛薬を投与された術後疼痛治療患者を対象としてサンプル及び臨床データ収集を行ったが、本年度は臨床データとともに60~80ほど収集され、既に所属先の東京都精神医学総合研究所に保管されているものと併せて合計340前後となった。ヒトにおける脳型GIRKチャネルのGIRK1~GIRK3のサブユニットのうち、GIRK3遺伝子のC-968G、C1339T、C1781T、C1817T、G2069Aの5SNPを対象としてPCR-RFLP法及びダイレクトシーケンスにより遺伝子型を決定し、216人のサンプルに関して術後24時間における鎮痛薬(フェンタニル)投与必要量との関連を解析したところ、翻訳領域のC1339T及び非翻訳領域のC1781T多型が術後の鎮痛薬総投与量との間に有意な関連を認めた。一方、既に鎮痛薬感受性との関連が示されているGIRK2の翻訳領域の同義多型A1032Gに関して、遺伝子型特異的なmRNAの発現の多寡を比較した。具体的には、先行研究においてGIRK2のmRNAはヒトの脳での発現が示されていることから、この多型の遺伝子型がA/A、A/G、及びG/Gのヒトの脳組織より抽出されたRNAを脳バンクから収集し、リアルタイムPCRを用いてmRNAの発現を遺伝子型間で比較したところ、鎮痛薬感受性の低いA/Aの遺伝子型においては他の遺伝子型に比べて、mRNAの発現が有意に低かった。この遺伝子型の患者では、鎮痛作用発現において重要なGIRK2の発現量が低下することにより鎮痛作用が低下し、その結果鎮痛薬感受性が低下している可能性が示唆された。
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