研究課題
平成22年度は主に、サンプル収集及びGIRKチャネル遺伝子多型の関連解析、またGIRKチャネル遺伝子多型が影響する機能の解析を進めた。15-60歳の外科患者のうち、下顎形成外科手術後において鎮痛薬を投与された術後疼痛治療患者を対象としてサンプル及び臨床データ収集を行い、合計360症例以上を収集した。ヒトにおける脳型GIRKチャネルのGIRK1~GIRK3のサブユニットのうち、GIRK3遺伝子のC-968G、C1339T、C1781T、C1817T、G2069Aの5SNPを対象としてPCR-RFLP法及びダイレクトシーケンスにより遺伝子型を決定し、283人のサンプルに関して下顎形成外科手術後24時間における鎮痛薬投与必要量との関連を解析したところ、いずれのSNPにおいても有意な関連は認められなかった。一方、別に収集された、開腹術後において鎮痛薬を投与された術後疼痛治療患者112人のサンプルに関して解析したところ、非翻訳領域のC1781T及びC1817T多型が術後24時間の鎮痛薬総投与回数及び総投与量との間に有意な関連を認めた。これらのC1781T及びC1817T多型に関して、遺伝子型特異的なmRNAの発現の多寡を比較した。具体的には、この多型の遺伝子型がC/C、C/T、及びT/Tのヒトの脳組織より抽出されたRNAを脳バンクから収集し、リアルタイムPCRを用いてmRNAの発現を遺伝子型間で比較したところ、鎮痛薬感受性の低いC/Cの遺伝子型においては、C1781Tに関してはT/Tの遺伝子型と比べ、C1817Tに関してはC/T+T/Tの遺伝子型に比べて、mRNAの発現が有意に低かった。この遺伝子型の患者では、鎮痛作用発現において重要なGIRK3の発現量が低下することにより鎮痛作用が低下し、その結果鎮痛薬感受性が低下している可能性が示唆された。
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Current Neuropharmacology
巻: 9 ページ: 113-117
巻: 9 ページ: 244-246