研究概要 |
(目的)血圧の食塩感受性には人種差のあることが知られているが、アフリカ在住の黒人における食塩感受性血圧変動についての情報は少ない。本報告ではタンザニア都市部の至適血圧(SBP<120かつDBP<80mmHg)のタンザニア黒人青年男子を対象にした検討を実施した。(方法)Schmidlin(Hypertension, 2007)らの報告による正常血圧者の食塩感受性基準に従って食塩摂取により平均血圧(MAP)が5mmHg以上上昇した黒人参加者を食塩感受性(SS)とした。それ以外の参加者を食塩非感受性(SR)とした。調査はダルエスサラームのテメケ行政区の住民から100名を抽出し、問診により糖尿病歴等を除き、最終的にデータが得られたのは58名であった。その内、至適血圧者は34名であった。調査は7日間の食塩錠剤とコンソメスープによる食塩摂取(140meq/day)とその後7日間の利尿剤ヒドロクロロチアジド(25mg/day)服用を実施し、血圧、24時間尿採取、血清ACE、ACE多型等を分析した。本研究はタンザニア・ムヒンビリ大学のNjelekela, Mtabajiとの共同研究であり、研究計画は当大学研究倫理委員会の承認済みである。(成績)食塩摂取7日間により、MAPはSSで9±3mmHg(n=10)、SRで-9±8mmHg(n=24)の変化を示した(p<0.01)。SSとSRの24時間尿中ナトリウム濃度には有意な差はみとめられなかった。ACE多型ではII型の比率はSSで40%、SRは25%であった。ACE多型であるII群のMAPの変化はDD&DI群と比較して高値を示し、特に食塩摂取後4日目、降圧剤投与7日目でそれぞれ有意な高値(p<0.05)を示した。また食塩摂取7日目(p<0.01)、利尿剤投与7日目(p<0.01)の血清ACE値はII群でDD,DI群と比較して低い値を示した。(結論)アフリカ在住黒人青年男子の至適血圧者に食塩感受性の存在が証明され、ACE多型であるII群での食塩摂取時のMAPが高値であり、ACE多型と食塩感受性についても詳細な検討が必要であると考えられた。
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