医療機関従事者の職場特性・ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)とストレスに関する質問紙調査に分析を加え、その結果を公表した。主たる結果として、医療機関従事者のストレスは一般労働者より高く、ストレスとWLBには有意な関連が認められた。職場・家庭状況要因とWLBは、それぞれ仕事満足度・家庭満足度に影響をもたらしていた。カールソンのワークライフコンフリクト尺度については、職場から家庭へもたらされる葛藤が、家庭から職場と比較して強く認められた。ハッキムのワークライフスタイル選好では、日本でも同様のパターン比率が確認され、環境適応型のストレスが高くなっていた。 地場産業調査では、愛知県の絞り産業に加え兵庫県のかわら産業を新たなフィールドとして開発した。関連資料の収集・聞き取り・フィールドワークから、地場産業における労働の意味づけと労働(ワーク)と生活(ライフ)の関係性に予備的検討を加え、その一部を取りまとめた。愛知県の産地問屋や製造者では、商人家族もしくは他の伝統的繊維製造業と類似した、労働と家族・生活が混然と一体化して営まれる実態が示唆された。次年度以降、他の繊維地場産業や商人家族とも比較検討し、労働の意味づけの変遷や、労働と生活の関係性にさらなる考察を加える。これらの作業を通じて、現行の「WLB論」を逆照射し、WLBとは何か、人と組織・人と地域の活性化とは何かを実証的に検討する意味が確認された。なお、検索できた資料や聞き取りの範囲では、韓国では絞り関連の地場産業や商人家族にたいする労働の意味づけは日本とはかなり異なり、その結果技術や家業の世代間継承にも温度差が大きいことが示唆された。さらに、中小企業の中でもとりわけ労働者の生活面に配慮した雇用管理を行う新興企業に聞き取りを行い、新たな職場構築に向けた示唆を得た。
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