平成20年度は根室市での関江谷遺跡測量調査と試掘調査を行った。具体的には、5月に関江谷台地の北西部に分布する竪穴住居址群の測量調査を、8〜9月にはこれらの試掘調査を行った。試掘調査では5軒の住居址と思われるくぼみに試掘トレンチを入れ、覆土に近代以降に掘り返された形跡が見られる。つまり、昭和20年代に発掘された可能性のある住居址1軒を特定した。この住居址については試掘トレンチを拡張し、住居の形態が長方形で擦文期の住居であることや、壁の立ち上がり・炉の位置を確認した。 また、住居址外と思われる区域についても、縄文・続縄文・オホーツク・擦文の各時期に属する遺物の分布状況を調べるために、6ヶ所の小トレンチを設定して発掘した。その結果、多くの小トレンチからは主に続縄文期の土器片が出土し、それ以外の時期の遺物分布密度は低いことがわかった。これは台地の利用方法の時代的な変遷を把握するために重要なデータである。さらに10〜11月には、夏の試掘調査時に新たに発見された台地南部の竪穴住居址群の測量調査を行い、台地上に分布する竪穴住居址の全体測量図がほぼ完成した。 なお、堅果類採集調査については、20年度に設定した調査対象木が周辺の状況等のため調査に不適であることが明らかになったので、21年度以降は調査対象木を変更して行う予定である。本研究の目的は大学博物館と地方博物館が共同で行う文化資源の調査・分析・活用システムを構築しそれを試行運用することであるが、今年度はこのようなシステムの少なくとも調査・分析部分については構築と1回目の試行運用を行うことができた。
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