平成21年度は根室市での関江谷遺跡の中の温根沼貝塚発掘調査と竪穴住居址群の補足的な測量調査を行った。5月に伊藤初太郎氏が作製した貝塚の位置を示すメモが見つかったので、8月にそれに基づいて試掘トレンチを入れ、温根沼貝塚の所在を確定した。そして、試掘トレンチ周辺をボーリング調査して貝層分布範囲を推定し、試掘トレンチを拡張する形で発掘区を設定して、貝層の一部を8~9月に発掘調査した。発掘調査と平行して台地中心部の竪穴住居址群の補足的な測量を行い、台地上に分布する竪穴住居址の全体測量図を完成させた。これらの成果をまとめ、根室市歴史と自然の資料館紀要22号に発掘・測量調査の概要報告を行った。出土資料は名古屋大学において整理作業を継続中である。なお、堅果類採集調査については、21年度からは遺跡の所在する台地周縁部の斜面において調査対象木を設定した。この対象木10本について、8月に若い果実がどの程度ついているかを双眼鏡を用いて悉皆調査したが、若い果実はまったく見られなかった。台地周縁部の他のミズナラ木にも対象を広げて同様の観察を行ったが、同様に若い果実は皆無であった。関江谷台地の今年度のミズナラ収穫量は、ほぼゼロであると思われる。 10月以降、今年度の発掘調査の成果を中心に展示方法の検討を行い、年度末の3月下旬から名古屋大学博物館において、特別展「縄文のタイムカプセルー貝塚-」をオープンさせた。この展示会は平成22年度の7月まで継続の予定である。本研究の目的は、大学博物館と地方博物館が共同で行う文化資源の調査・分析・活用システムを構築しそれを試行運用することであるが、今年度は昨年度よりもさらに踏み込んで、調査・分析だけでなく活用部分までを含めてシステムの運用を行うことができた。
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