平成22年度は、根室市において関江谷遺跡の中の温根沼貝塚発掘調査を継続して行った。昨年度に調査した発掘区の東側に続く貝層を8~9月に発掘し、貝層の分布域の端部を確定した。サンプリングした貝層は、根室市歴史と自然の資料館で発掘調査と並行して水洗した。調査で出土・採集した遺物は名古屋大学に送付して整理・分析を行った。これらの成果をまとめ、根室市歴史と自然の資料館紀要23号に発掘調査の概要報告を行った。なお、堅果類採集調査については、21年度に調査対象とした関江谷台地周縁部の対象木について、8月に若い果実がどの程度ついているかを双眼鏡を用いて悉皆調査したが、若い果実はまったく見られなかった。台地周縁部の他のミズナラ木についても同様の観察を行ったが、同様に若い果実はほぼ皆無であった。 また、昨年度の発掘調査の成果を中心に名古屋大学博物館において3月末にオープンした特別展「縄文のタイムカプセルー貝塚-」を7月まで継続し、展示制作者によるギャラリートークや観客による出土魚骨の観察体験、縄文時代の動物質食料・温根沼貝塚出土資料から見た遺跡周辺の環境などに関する講演会等も実施した。温根沼貝発掘調査および出土資料の分析で得られたデータは、日本考古学協会総会及び日本文化財科学会大会などでも発表した。本研究の目的は、大学博物館と地方博物館が共同で行う文化資源の調査・分析・活用システムを構築しそれを試行運用することであるが、今年度も昨年度と同様にシステムの運用を行うことができた。
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