平成22年度は、小中学校教科書の単元をさらに精査し、水圏環境評価研究を応用した試行プログラムを作成した。また、小学生(低学年)と毎年行なっている「川の楽校」において、児童に対するアンケートを行い、学習定着度の調査を行った。水圏環境評価研究は、これまでと同様盛川水系の調査と、波打ちぎわやアマモ場での仔稚魚調査等を行った。その結果、ダムによる食物連鎖系の変化を、ダム下流域への人為的な土砂供給(有機物を含む)によって改善できる可能性があることなど、学習者が社会貢献を実感できる新知見を多く得た。 特別共同企画展「奇跡の海三陸~その豊かさの秘密に迫る~」の展示物を再利用した、ローカル線(三陸鉄道)駅なか展示は、小規模の展示替えを行って継続した。これは、水圏環境評価研究の成果をベースとしたもので、地域の児童生徒が気軽に訪れることができるよう駅構内の一部を借りて行ったものである。また、本学部の学芸員養成課程履修生を見学させ、展示の改良方法などについて考察させた。 最終年度の目標としていた学習プログラムパンフレットは、原稿作成の最終段階まで進んだが、東日本大震災による大津波で、原稿データが全て失われた。また共同で原稿作成を行っていた、陸前高田市立博物館の学芸員と睦前高田市立博物館の臨時職員の2名が津波の犠牲となった。両名は本学学芸員課程の修了生である.陸前高田市立博物館では、館長以下の学芸員と職員全員が犠牲となり、博物館も壊滅した。 被災後、陸前高田市でただ一人生き残った海の貝のミュージアム主任学芸員と協力し、また本学の4年次生の協力も得て、学習プログラムパンフレット原稿を一から作り直して印刷した。被災地では、小中学校の学習環境が非常に悪化したままであり、今後新たなプログラム開発などの研究を進めながら、パンフレットの活用方策について検討を行なっている。
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