本研究の目的は、スミソニアン協会によるサイエンス・コミュニケーションの実態を調査・検討することである。スミソニアン協会、国立アメリカ歴史博物館およびレメルソン発明および革新研究センターの多様な取り組みのうち、2009年度は、展示およびシンポジウムに焦点を定め、8-9月に下記のとおり現地調査を実施した。 (1)1994年に同博物館内に創設された「Science in American Life(米国人の生活における科学)」展示は、人工物、歴史的写真、マルチメディア技術を用いて、現代の米国人の生活を形成してきた科学的課題、議論、誤解、業績を示す。2008年11月のリニューアルで新たに加えられた「将来を見据えて」展示室の「Robots on the Road?(路上のロボット)」を詳細に調査した。同展示は、アメリカ社会が移動ロボットに関する近年の研究や革新に対してどのように反応するかを探求している。 (2)2008年度に引き続き、同センター「Invention at Play(遊びにおける発明)」展示を調査した。 (3)同センターの「ジェローム・レメルソン:玩具と発明」ショーケース展示は、ジェローム・レメルソンが発明した玩具や設計図などを展示している(2008年12月~2010年12月末)。8月28日、本展示の前にて、同センターの歴史研究者Joyce Bediによる「Inside the Playful Mind of a Serious Inventor」(「Meet Our Museum」シリーズ)といらトークイベントに参加し、意見交換を行った。 (4)2009年11月6-7日の「Hot Spots of Invention(発明のホット・スポット)」シンポジウムに関する情報収集を行った。なお、これに関するショーケース展示も行われている(2010年末まで)。 (5)スミソニアン協会アーカイブスのPamela Hensonと意見交換を行った。 研究成果の発表については、2009年12月の「日本の技術革新第5回シンポジウム」パネルディスカッション「技術革新学の確立へ向けて」において、「技術革新と科学博物館」というテーマで、レメルソン発明および革新研究センターの多様な取り組みを紹介するとともに、科学技術コミュニケーションの場としての科学博物館について検討した。なお、本講演の内容は『日本の技術革新第5回シンポジウム報告』に掲載されたほか、関連論文が『日本の技術革新体系』に所収された(11研究発表の項参照)。
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