本研究の目的は、スミソニアン協会によるサイエンス・コミュニケーションの実態を調査・検討することである。スミソニアン協会、国立アメリカ歴史博物館およびレメルソン発明および革新研究センターの多様な取り組みのうち、2010年度は、講演およびシンポジウムに焦点を定め、下記のとおり現地調査を実施した。 (1) スミソニアン協会は1846年の創設以来、公衆向けの講演を行ってきている。スミソニアン協会年報およびスミソニアン協会アーカイブス所蔵の関連資料を調査し、創設以来の公衆向け講演の形式・内容を確認した。これまでの変遷や傾向について、現在分析を行っている。 (2) イノベーティブ・ライブスは、多彩な顔触れの発明家による公衆向けの相互作用的教育プログラムであり、撮影された画像およびテキストは、国立アメリカ歴史博物館内アーカイブス・センターにて保存・公開されている。Kevlar[○!R]を発明したデュポン社の女性科学技術者ステファニー・クウォレクStephanie Kwolekによる中学生向けのイノベーティブ・ライブスを視聴し、DVD複製を入手した。 (3) レメルソン・センターが行うシンポジウムは、学術的なプレゼンテーションとともに、家族向けハンズオン活動(Spark!ラボ)、教育プログラム(イノベーティブ・ライブス)、ショーケース展示が実施される。研究代表者は、11月5-6日「Food for Tomorrow」シンポジウムに参加し、関係者と意見交換を行うとともに、これらの関連資料を入手した。 研究成果の発表については、レメルソン・センターの「She's Got It! : Women Inventors and Their Inspirations」に関するDVD資料、教師用指導書などを分析し、Society for Social Studies of Science Annual Meetingにて発表を行った(研究成果参照)。これにより、同センターのトピック選択に関するポリシーや、サイエンス・コミュニケーションに対する考え方の一端が明らかになった。
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