3年度にわたる本研究プロジェクトの初年度にあたる本年度は、関連文献・資料の収集に努め、博物館学、文化政策学に関わる文献を収集した。研究のための準備段階として、博物館学における「映像」一般の位置づけについての研究を進めるとともに、コミュニティシネマ活動の現状、コミュニティシネマ支援センターが運営する「シネマテーク・プロジェクト」についての調査を行った。「シネマテーク・プロジェクト」は、全国の映画関連公共施設がリスクと資金を分担することで、古典的な外国映画を直接輸入し、これらを巡回上映するもので、地域における公共的な映画活用のモデル化を目指した試みと考えられる。こうした試みが文化庁の提起した「これからの日本映画の振興について」の中で謳われている「非映画館も活用した上映機会の拡大」にどのように生かされていくのか、事業の継続性をどのように担保していくのか、こうした試みに博物館がどのように関わっていくのかといった点が今後の検討課題になってくると思われる。また、東京芸大映像研究科、コミュニティシネマ支援センターといった関連機関のヒアリングを通して、「映像学芸員」構想に関わる課題の検討を行った。「映像学芸員」については、コミュニティシネマ支援センター、他の主催による「全国コミュニティシネマ会議」(会場:せんだいメディアテーク)における分科会「映像学芸員-資格の新設とその目的」にパネリストとして参加、「映像学芸員」構想が(民間レベルで)立ちあがってきた背景、学芸員・司書資格の現状、「映像学芸員」の制度化に向けた様々な問題点について討議を行った。
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