研究概要 |
近年,絵画や工芸品,建築物といった(有形)文化財の多くは,長期に渡る直射日光や湿気をはじめとする環境的要因によって既に劣化しており,色彩や形状は損傷した状態で保存されている.本当時の状態を再現したくても文化財の修復作業には高度な専門技術と膨大な時間を必要とするため容易ではない.そこで,本研究課題では,実世界にコンピュータで生成した仮想空間を融合させようとする複合現実感技術を用いて,実物体の写実性や臨場感を保存しながら退色した文化財の色修復を仮想的に実現することを目的したデジタルガイドシステムを構築する.本システムでは,この色修復情報を博物館や美術館などを利用する人間の色覚特性を考慮した上で提供することを目指す. 本年度(平成20年度)は研究期間の初年度であることから,色修復像の生成手法および実物体の三次元計測手法の提案として具体的に以下のことを実施した. (i)実空間および投影ディスプレイ,透過度可変フィルタ,小型カメラについて幾何学的なキャリブレーションを行った. (ii)デジタルガイドシステムの核となる投影ディスプレイ像と透過度可変ミラーのフィルタ像を求める手法および実物体の三次元計測法を求めた. 次年度は,本年度に提案した上記の手法を用いて,デジタルガイドの試作システムを構築し,更には,博物館などにおける利用者にとって効果的なユーザインタフェースの設計・実装について施行する予定である.
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