本調査研究の最終年度である22年度では、独立行政法人国立科学博物館が主催する企画展「あしたのごはんのために~田んぼから見える遺伝的多様性~」および「宝石サンゴ展~深海からのおくりもの~」を対象に、展示の開発過程並びに展示完成後の各段階において、前年度までの研究実績から得られた様々な知見を活用しながら、来館者への出口アンケート調査(記入式)やインタビュー調査、トラッキング調査を試行し、その内容や効果について検討を行った。その結果、出口アンケート調査(記入式)に関しては、展示を見終わった来館者へ調査に協力してもらう際の声かけなどのアプローチの仕方や、来館者にとっての質問への答えやすさを考慮した設問の構成、親近感を持てるアンケート用紙のデザインについて、実例を蓄積し、効率的・効果的な手法を確立することができた。 また、インタビュー調査に関しては、記入式アンケートと比べて、聞き手と回答者(来館者)、双方向のコミュニケーションが成立し、来館者の展示理解の傾向について、より深い情報を得られることが顕著であった。トラッキング調査については、来館者が歩く導線の傾向を把握することにより、展示解説パネルに改善を施すなど、その結果を有効利用することができた。このように、展示企画段階や完成後において、効率的かつ効果的に来館者研究および展示評価の各手法を実施するための具体的、実践的な調査手法を見いだすことができた。
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