研究課題/領域番号 |
20605019
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
出川 洋介 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 助教 (00311431)
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研究分担者 |
勝山 輝男 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 企画課長 (20214356)
田中 徳久 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (60270691)
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キーワード | 菌類 / 微生物 / 分類学 / 博物館 / インベントリー / 自然史 / 生涯教育 / ボランティア |
研究概要 |
本研究の成果物として神奈川県立生命の星・地球博物館周辺域における菌類相調査の結果を「入生田菌類誌資料第1巻」として刊行した。編集は同館の大坪奏学芸員が主導し、一般市民の博物館ボランティアメンバー約25名自らが執筆に携わった。10年に及ぶ調査には幼児から年配者に至る市民のべ70名以上が携わり5千点をこえる菌類標本が収蔵された。しかし報告書にはこれらを全て網羅的に掲載することはせず、1種ずつ正確に同定し記載することを心がけ計52種が記録された。信頼できる客観的なインベントリーデータを蓄積していくには、まず量より質の向上が求められ、それを長期的に可能とする体制の確立こそが肝要と考えた為である。研究手法上、菌類を便宜的に5群(大型担子菌、子嚢菌、植物病原菌、変形菌、その他の微小菌)に区分し、各々約5名からなる班がこれに対応し個人が記載を担当した。記載は必ず良好な状態の標本に基づき、顕微鏡観察の結果による図版とともに同定根拠を明示した。学芸員は各菌群の基礎事項や観察同定、撮影描画に関する技術講習を繰り返し、各種を担当するメンバーの原稿執筆を指導した。この原稿を各菌群の分類学者に査読依頼し、メンバーは学芸員を介して専門家から原稿修正、あるいは再度、現地での観察技術についての指導を受けた。従来から関心が高かった菌群については顕微鏡による精緻な観察同定の重要性が周知、習熟されたこと、また従来、研究者のみが調査対象としてきた植物病原菌が市民の手により多数報告され自然観察の対象たり得たことは特筆に値する。未曾有の菌類多様性の解明に、博物館を介した市民と研究者との連携システムは有効と考えられ、今後、各地でも広く実践されていくことが望まれる。
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