研究概要 |
本研究は、博物館での教育の新しいあり方として、一般市民・来館者と会話を行ないながら、解説、講座、調査などを行うというコミュニケーションのスタイル「演示」を提唱し、内外の「演示」事例を収集するとともに、博物館を舞台とした「劇場型演示」、「野外調査型演示」の実践を行うことを目的としている。 国内事例の収集として、北海道遠軽町の丸瀬布昆虫生態館を訪問し、地域住民とのパートナーシップに基づいて運営されている小規模館のマネジメントについて、情報を得た。 「劇場型演示」の実践として、2009年4月から6月にかけ、一般市民の家族を対象としたセミナー「キリギリスの赤ちゃんを育てよう」を実施し、参加者自身が材料の採集と飼育を行い、学習成果を展示するという一連のプログラムを試行した。成果は、同年6月から8月にかけて開催された企画展「初夏の鳴く虫と巡回展」で展示された。展示作品は、初心者の視点でわかりやすい内容で好評であったが、意欲的な参加者がある一方で、展示の製作までに至らない例もあった。展示の制作は一般市民にとってハードルが高く、学習プログラムとして取り入れるには課題あることが判明した。2009年8月の展覧会「神戸元町・夏の昆虫館」では、来館者の観覧意欲を高める手法として展示資料への「人気投票」を導入し、その効果を検証した。結果、分類学的配列では見過されがちな小型の昆虫にも目を向けてもらえた。 「野外調査型演示」の実践としては、連携研究者の鈴木武により、兵庫県内に広く情報提供を呼びかけ、カタツムリの分布調査を実施し、新たに1,100件のデータを取得した。カタツムリは知名度、関心ともに高く環境学習の素材として優秀であるが、都市部ではカタツムリがまったく見つからないこともあり、地域によっては、素材として使えないことがあることが判明した。
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