研究概要 |
地質時代に埋積した堆積物中に含まれるイソプレノイドキノン(略してキノン)と関連化合物(ビタミン)に着目し,それらの組成分析から過去の海洋・陸上環境における全微生物の群集組成およびバイオマス,それらの年代変動を復元するために,分析法の開発と検討を行った。本研究は,微生物が駆動する長時間スケールの物質循環システムを解明するための情報を得ることにも踏み込む。検討された方法を,実際の連続的に得られた堆積層に対して応用し,年代変動を復元する段階まで進めることが目標である。平成21年度の研究成果は以下のとおりである。 1.平成21年3月~5月に,統合深海掘削計画(IODP)の赤道太平洋航海(Expedition 320,PEAT)に有機地球化学者として参加し,深海掘削堆積物コアを採集した。2009年10月には始新世~中新世の連続的なコア試料が当研究室に届けられ,汚染チェックのための分析を始めた。 2.中部日本の新第三系の沿岸堆積層について,堆積性高分子有機物(ジオポリマー)から結合態キノンを取り出す分析方法の検討を継続して行った。3弗化ホウ素(BF3)/ジエチルエーテル錯体を用いたエーテル切断法に加えて,高温下の加水分解による切断も検討した。数種類のキノンに類似したビタミン化合物を同定した。 3.キノンまたは類似したビタミン化合物の構造決定と,それらのジオポリマーへの取り込み反応を明らかにするために,キノンとビタミンの標準物質を用いて検討実験を行った。その結果,フィロキノン(ビタミンK)のジオポリマーへの結合形態について新しい知見を得た。 4.植物化石を対象にキノン・ビタミン化合物の結合態成分の検出を試みた。その結果から生体から化石への続成過程におけるそれら化合物の変化を検討した。
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