研究概要 |
本研究の全体構想では,研究開発活動や特許等の知的財産に係る活動をそれぞれイノベーションの固有の機能として捉えることで,知識創造・能力構築から価値創出までを包含するイノベーション・システムに関して,企業レベルでのデータに基づいて実証分析を通じて明らかにしていくことをめざしている. 近年の政策の基本方針では,科学技術に加えてイノベーションの推進も強調され,研究活動等のグローバル化といった変化等に対応した知的財産権制度の見直しや,産学官の各部門が連携した知識の活用と協働のためのしくみの構築といった推進の方向が示されるとともに,科学技術・イノベーション政策の企画立案・評価・検証等を客観的証拠に基づいて行うべく「科学技術イノベーション政策のための科学」を推進するとされている.このように科学技術・イノベーション政策の推進においても,イノベーション・システムをより良く理解して説明できるような研究がさらに求められることとなった. しかし,これら政策形成の根拠や,さらにはその根拠の一部ともなる政策分析の基盤となるべき,科学技術・イノベーション活動の測定や統計自体については言及されていないことを確認した.現状のまま既存の利用可能なデータだけに基づくと,イノベーション・システムについて限定されたあるいは偏倚した理解にとどまりつづける大きな懸念があることが明確となった.そこで,イノベーション・システムに関するより適切な分析を可能とするよう,本年度は,研究の基盤とその研究によって寄与すべき政策推進方策とのあいだの乖離を埋めるべく,科学技術・イノベーション活動の測定や統計に係る現状と課題の探索を進めた.
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