今年度は、研究の基礎調査資料(各国法制度の現状に関する資料)収集に努めるとともに、地域のデザイン活動を側面から支えるデザイン関連機関等の調査(大阪等)を行った。海外調査については、ヘルシンキ、バリ島およびニューヨーク等におけるデザイナーの活動状況調査を実施し、また、知的財産の教育者国際学会(ATRIP)研究会において、意匠法教材に関する報告を行った。これらの調査を進行させるなかで、模倣品を排除する方策には、新規なデザインに独占権を付与する意匠法という仕組みだけではなく、インディアン等の原住民部族に伝わる伝統的なデザインに対して、一定条件下において他者の模倣を排除する方策が法律で認められている場合があることがわかった。伝統的模様は、他地域のデザイナーによって製品化されることもあり、思わぬ権利行使を避けるという本研究が目指すマネジメントモデルにとって重要な情報が得られたものと考えている。この調査成果は、次年度以降に取りまとめられる予定である。加えて、バリ島等での調査によって、近隣同一地区内での模倣は放置するが、他地域での模倣は許さないという意識を有する町工場の工場主が極めて多いこともわかった。これが、インドネシアはじめ発展途上国独特の風土である家内工業の共同体制(特に、インドネシアにはカースト制度が残存し転職が難しいという事情がある)に由来するものか、先進国にも一般的な風潮なのかは、調査を要する。これらは次年度以降の課題としてとりくんでいく。
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