本年度は、モデルの構築について必要な準備作業を中心に行い、あわせて新たな問題として、2つの課題を検討した。第1は、スペアパーツ意匠の修理目的実施を権利の効力を及ぼさせない欧州議会提案と同様の規定を日本に導入すべきか、という問題、第2は、伝統的模様等の意匠を模倣から保護する方策について新法を導入すべきか、という問題である。第1については、研究を協力していただいている毛利氏と学会報告を行い、理論的難点はそれほど大きくないが、日本では特に企業サイドから全く指示されていないことが確認された。また、第2については、オーストラリア等における調査を実施して、情報収集に努めた。いずれの問題も、デザイン創作の際に、特に商品販売の海外展開の際には重要な問題として意識されるべきものであるが、日本の意識は低く、模倣対策という側面からの検討を加えるべきことを確認したので、最終年度に構築されるモデルに組み込むこととした。モデルそのものについては、中央大学付置の日本比較法研究所および中央大学知的財産法研究会所属の弁護士等を対象とする研究会において試行モデルを実際に紹介してコメントを頂戴することを予定しており、それに関する準備を進めた。デザイナー等へのヒアリングは、予想以上に成果があがっていない。それは、デザイナーの無知が想像以上であり、また、理解している諸氏は逆に守秘のハードルが高く、伺った話をもとに公表資料に作成することを拒否した上でのインタビューというのが数件あった。そのなかで、株式会社クルーの馬場了氏は、比較的重要な視点を公表資料で提供しており、彼のマネジメントに法的観点を加えて次年度のモデル構築に役立てようと考えるに至った。当初予定と多少異なる方向性となっているが、今後とも成果をあげるべく継続的な努力をしていきたいと考える。
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