本研究では、デザインマネジメントに知的財産権管理を組み込むことを目途として、そのための注意点を調査検討した。今年は主として、デザインの公開前後に分けて理論的検討が進められた。公開前後で分けることができるのは、意匠登録は、公開によって保護の機会が失われるし、営業秘密保護に必須の秘密管理を公開までに開始しなければ同様に保護が失われるからである。あわせて、デザインマネジメントにとって意匠登録が費用対効果の面で最善策であるとの指摘がデザイナー、弁理士等の意見聴取の結果であった。他方、スペアパーツ意匠の問題(欧州意匠指令改正案として、スペアパーツ意匠の意匠登録が認められないという案が欧州議会に提案された)のように、今まで意匠登録可能であった対象が、法改正によって登録不可能になる場合もあり、また独占禁止法の発動によって期待される強力な効果が一部停止される事態もあり得ることが明らかにされた(後者の成果については、2010年9月の研究会報告で明らかにした)。昨年度明らかにした伝統的部族の伝統模様の単独法保護がリスク要因になることとともに、意匠権を獲得し、他者の意匠権にだけ注意していれば、マネジメントとしては十分であるというデザイナー等の意見聴取に現れた考え(それは、デザイナー社会にとって当然と受け取られている考えである)が不適切な部分もあることが明らかにできたと思う。なお、全体の成果とりまとめが、若干ずれ込んでいるが、「ものづくり支援法務」と題して、公刊される見込みである。
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