昨年度設計したアンケート調査票に基づいて、わが国の各業界における特許制度利用上位企業約200社に対して戦略的知的財産マネジメント人材(CIPO)に関するアンケート調査を実施し、その回答について集計および検討を行った。その結果、わが国の企業におけるCIPOの実態、実務経験などについてきわめて興味深い知見が得られたので、それに関して国外及び国内の学会での発表を行った。具体的には、アンケート回答企業のうち、CIPOの職を置いているとする企業は約6割であり、電機系企業では比較的その割合は高い一方、機械系企業ではその割合が低い傾向が見られた。また、出願件数が多い企業程CIPOの置かれている割合は高かった。さらに、CIPOのうち弁理士資格を有する者の割合も2割程度であった。また、その実務経験・キャリアに関しても一定の傾向が見られた。このように、従来全く明らかでなかったわが国CIPOの実態の解明が進み、今後のわが国の知的財産立国推進に不可欠な三位一体経営実現のためのCIPO育成のためにきわめて役立つ基礎的なデータが得られた。さらに、CIPO育成のための教育に関しても、具体的に必要と思われる科目や実務経験等に関するデータが得られ、これらに基づき、具体的なカリキュラムの構築が可能となると考えられる。また、知的財産マネジメントにおけるCIPOの役割について、米国で著名なCIPOが著書を発刊したため、その内容を翻訳し、検討を行った。この内容についても、図書により広くわが国においても公刊予定であり、本研究の成果の一部として、CIPOの役割を示す一例として意義深いものとなると思料する。
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