AnPixJの縦断的解析: AnPixJの色素結合GAFドメインの赤色光吸収型の結晶構造と、分光的特徴から、AnPixJのPr型の色素はプロトン化されている可能性が示唆された。そこで、Pr型の吸収スペクトルのpH依存性を調べたところ、塩基性バッファーでは、Pr型のQyバンドの吸光係数が有意に低下し、Pr型がプロトン化されていることが確かめられた。 先行研究の時間分解吸収変化測定から、Pg型からPr型、Pr型からPg型への変換過程それぞれの中間体が得られている。低温で中間体をトラップする実験も行っており、Pr型からPg型への変換においては、時間分解とほぼ同様な中間体が得られた。一方、逆反応では、時間分解ではトラップできなかった新たな中間体が得られている。また、AnPixJの色素への特異的なラベリングのためのアポタンパク質の精製とPCBとの再構成実験を行い、効率はあまりよくないものの、ホロタンパク質の再構成に成功した。さらなる条件検討の後に、実際に色素をラベリングし、NMRやFTIR解析を行う予定である。 他のシアノバクテリオクロムGAFドメインの横断的解析: 走光性の光受容体であるSyPixAについて、生化学・分光解析を行った。SyPixAをシアノバクテリアとフィコシアノビリンを合成する大腸菌のそれぞれから精製し、分光特性を調べたところ、ともにフィコビオロビリンを結合し、紫色光吸収型と緑色光吸収型の間の可逆的な光変換を示した。これらの分光特性は先行研究のTePixJとよく似ている。TePixJとSyPixAは色素績合ドメイン全長では保存性が低いが、TePixJの分光特性に重要な役割を果たすシステイン残基が保存されており、局所的なアミノ酸が分光特性を決定していることが示唆された。
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