研究課題
本研究では、酸素発生型光合成のモデル生物であるシアノバクテリアSynechocystis sp.PCC 6803を用いて光化学系II(PSII)のアセンブリーに重要な役割をもつと予想される表在性タンパク質に着目して研究をおこなっている。本年度の研究成果は以下の通りである。1.表在性蛋白質の遺伝子破壊株を用いたPSIIアセンブリー過程の解析本年度は表在性タンパク質の遺伝子変異株のうちPsb28蛋白質の遺伝子破壊株(Δpsb28)を中心に解析した。すでに、Δpsb28株は、高温条件で強光に曝されたときに増殖が抑えられることがわかっている。Blue-Nativeゲル電気泳動による解析の結果、Δpsb28株は活性型の光化学系II2量体量が少なく、光化学系IIのアセンブリー中間体、もしくは解体中間体が特異的に蓄積することを見出した。この結果はΔpsb28変異株では、光化学系IIのアセンブリーもしくは解体過程が滞っており、高速度での代謝回転が必要な条件において(高温、強光)、Psb28が重要な役割を果たしていることを示唆している。2.表在性蛋白質と相互作用するPSIIアセンブリー中間体の解析Psb27-His株、Psb28-His株からニッケルカラムを用いて、PSIIアセンブリー中間体と推定される標品を精製した。現在のところ、いずれの標品も量が微量であるので、収量を増大する必要がある。3.表在性タンパク質の脂質修飾が光合成の特性に与える影響Psb27とPsbQの脂質修飾様式を変化させた変異株の光合成特性の変化を解析した。予備的な解析の結果、脂質修飾を変化させると、光合成のストレス耐性が低下する可能性を示す結果が得られた。今後、脂質の修飾変化が想定通り起こっているのかどうかを質量分析により確かめる必要がある。
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