研究課題
光生命化学を微視的立場から明らかにするために、理論的手法で原理的な立場からアプローチし、物理学・化学のことばを用いた下位の階層から生命活動の本質的理解を深めようと意図している。理論的なアプローチに基づいた反応動力学シミュレーションは、分子の動きを目で見られる形で、結合の開裂・変化を追跡することができる。とくに光励起された分子は基底状態へと非断熱遷移を起こす。この非断熱遷移を正確に取り扱える手法でシミュレーションを行い、生体分子の微視的な初期過程を解明するのを目的としている。気相の計算に加え、周りのタンパク質を考慮した計算をロドプシン、イソロドプシンに対して行った。ロドプシンがイソロドプシンに比べて量子収率が高く、反応時間も短いことをシミュレーションにより再現した。ロドプシンでは励起状態においてトラジェクトリが遷移を起こす円錐交差点近傍へ滞りなく近づくのに対し、イソロドプシンでは、行き来しながら時間をかけて円錐交差点へ近づくことがわかった。ロドプシン中の11-cisレチナールを光励起したとき、9-cisレチナールを有するイソロドプシンを生じず、イソロドプシン中の9-cisレチナールを励起したときは、11-cisレチナールを生じなかった。これは気相の計算結果と異なっており、周囲のタンパク質により回転方向が一方向に制約されたためであると考えられる。ロドプシンの効率的な光異性化に重要な役割を果たすのがCys 187とTyr 268であったのに対し、Tyr268はイソロドプシンにおいて、単に回転方向を一方向に制限することにだけ関与していた。Thr 118も異性化の方向に重要であることがわかった。
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