(1)活性酸素の生成機序解明:脳組織生スライスを対象とて、低酸素-再酸素過程におけるスーパーオキシドの生成機序を解明することを試みた。その結果、キサンチンオキシダーゼの阻害剤(アロプリノール)、NADPHオキシダーゼ関連の薬剤(アポサイニン、DPI)処理では活性酸素依存性化学発光は変化しなかった。一方、ミトコンドリア電子伝達の阻害剤(シアン、アンチマイシン、ロテノン)、アンカップラー阻害剤では化学発光強度に影響が認められ、低酸素-再酸素過程におけるスーパーオキシドの生成機序にミトコンドリアの関与が示唆された。 (2)活性酸素生成とエネルギー代謝との関係:活性酸素とエネルギー代謝率は正の関係があると考えられている。この点を、脳のスライスに高カリウム処理を施して、スーパーオキシドの生成が亢進するか検討した。その結果、定常状態では有意差はみられず、活性酸素の生成は単純にエネルギー代謝と連関しているとはいえないことが明らかになった。一方で、低酸素処理を行った後、再酸素時に活性酸素の生成亢進が見られた。この結果から、活性酸素生成は一旦低酸素になった組織に、再び酸素が供給される際に亢進する。また、低酸素強度と活性酸素量には何らかの関係があると考えられた。低酸素の強度は、組織への酸素の供給と消費のバランスにより決まると考えられる。組織への酸素の供給を低下させることによる低酸素と酸素の消費が亢進することによる低酸素が、活性酸素の生成にどのように関与するか検討したい。
|