研究課題/領域番号 |
20610004
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
坪井 昭夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (20163868)
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研究分担者 |
吉原 誠一 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90360669)
高橋 弘雄 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20390685)
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キーワード | 神経幹細胞 / 嗅細胞 / ニューロスフェア / 嗅球介在ニューロン / 成体神経新生 / 樹状突起 / レンチウイルス / 5T4 |
研究概要 |
嗅細胞は生涯を通して再生されるという神経細胞の中でもユニークな性質を持っており、多様で高感度な匂い感覚がどのようにして生じ、再生されるのかを研究することは極めて重要である。本研究では先ず、嗅神経幹細胞が如何にして嗅細胞へ分化し、その個性を獲得するのかを理解するため、マウスの嗅粘膜を分散した細胞から、ニューロスフェア(嗅神経幹細胞を含む)を形成させ、更にこれらの細胞から嗅細胞に分化誘導させるin vitro系の確立を目指している。固有層由来のニューロスフェアを用いて分化誘導を行った結果、TuJ1抗体とGFAP抗体で染色される細胞が得られたので、少なくともニューロンとアストロサイトに分化する能力があると考えられる。 嗅細胞と同様に、嗅球の介在ニューロンは、胎生期のみならず成体時においても、常に神経新生や新たな神経回路が生じるというユニークな特徴を持っている。本研究では次に、片鼻を閉じた新生仔マウスに関して、レンチウイルスを用いてGFPで標識された嗅球介在ニューロンの形態を調べたところ、鼻を閉じた側のニューロンでは、鼻を開いた側に比べて樹状突起の伸展が未発達であり、シナプス密度も減少していることが判明した。そこで更に、片側の鼻孔を閉じて匂い刺激を遮断したマウス嗅球と正常な嗅球とで発現量が変動する遺伝子をDNAマイクロアレイ法により探索した。その結果、5T4と呼ばれる細胞表面に局在する膜蛋白質が、匂いの刺激が減少するのに伴って、その発現量も減少することが明らかになった。また、レンチウイルスを用いて、この5T4分子を嗅球介在ニューロンで過剰発現させると、樹状突起の枝分れが顕著に増加することが分かった。樹状突起の枝分れが発達するということは多くの神経細胞と接続できることを意味し、神経活動が盛んな細胞ほど多くの細胞と神経接続するという合目的な機構が、5T4分子を用いて説明できると考えられる。
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