我々はH20年度に、マウス線維芽細胞に遺伝子導入を行い、直接に神経幹細胞を得る分化誘導系を確立した。H21年度の計画は1)マウス皮膚繊維芽細胞から誘導された神経幹細胞の性質および由来の解析2)マウス皮膚繊維芽細胞から誘導された神経幹細胞のエピジェネティックな変化の解析3)マウス皮膚繊維芽細胞から誘導された神経幹細胞の移植治療における有効性と腫瘍化能の評価を目標として行われ、マウス皮膚繊維芽細胞から誘導された神経幹細胞はエピジェネティックな観点からも十分に成熟した神経幹細胞であることが証明された。我々が得た神経幹細胞はES/iPS細胞から同時に分化をさせた細胞よりも分化度が高く、iPS細胞を経ないで神経幹細胞が生成されていることが示唆された。この結果として、従来2ヶ月かかっていた繊維芽細胞から神経幹細胞を得る工程を3週間程度に短縮することができた。これらの細胞の腫瘍化能に関しては培養法を改良することによって、樹立されたiPS細胞と同程度の腫瘍形成能の神経幹細胞を作り出すことができた。さらに同様の方法をヒト細胞に応用し、従来半年以上かかっていた線維芽細胞から神経幹細胞の樹立をわずか2週間で成し遂げることに成功した。我々が得たヒト神経幹細胞はiPSから得た神経幹細胞と同様に、ニューロン、アストロサイトへ分化することが明らかになった。今後はさらに培養法を改良すると同時に、個体への移植を行い安全性と有効性の評価を行っていく。
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