これまでリン酸化型TIF1βは核内でドット状スポットとして局在することを免疫蛍光染色で確認しており、何らかの強固な複合体を形成していることが示唆されていた。リン酸化型TIF1βが共局在する核内領域について、様々なピストン修飾抗体を用いて探索した結果、ヒストンH3K4me3などの活性化クロマチン領域と部分的に共局在し、これまで分化した細胞で報告されていたヘテロクロマチンタンパク質HP1などとは未分化な幹細胞であるES細胞では全く共局在しないことを証明するデータを取得した。さらにTIF1βがES細胞において形成している複合体構成因子について免疫沈降等を用いて探索し、その結果esBAFなどのクロマチンリモデリング複合体構成因子が含まれることを見出した。TIF1βがリン酸化依存的にこれらの複合体とOct3/4とをリンクさせ、Oct3/4標的遺伝子のプロモーター領域にリクルートされることがクロマチン免疫沈降などの実験データとの組み合わせから証明することができた。さらにマイクロアレイ解析から実際にITIF1βのリン酸化によって発現変動する遺伝子の約半分がOct3/4標的遺伝子であることを確認した。残りの標的遺伝子が何によって制御されているかは未だ未同定であるが、今後それらを制御するメカニズムについても検討を詰める予定である。また、現在本内容について論文投稿しており、リバイス実験などでアクセプトされるべく追加実験を行っている。
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