研究概要 |
1.タヤマヤスリサンゴ幼生の変態誘因物質の標的細胞の同定 交付申請書に示した20年度の研究実施計画である「11-deoxyfistularir-3の構造活性相関研究」を進めた.その結果,左右2つのスピロイソオキサゾリン骨格の距離がメチレン鎖C4でもC5でも活性には影響しないことが判った.すなわちC4,C5のいずれも11-deoxyfistularin-3と同等の変態誘因活性があった.これら結果は,今後の蛍光基導入型誘導体合成において重要な知見となった. 2.2属3種のサンゴ幼生の変態物質の決定 交付申請書に示したトゲスギミドリイシ(沖縄),コユビミドリイシ(沖縄),ルリサンゴ(Guam島)の3種サンゴ幼生において変態誘因物質の探索を行った結果,共通の変態誘因物質として新規マクロライド,Luminaolideの単離・構造決定に成功した.現在,この物質の立体構造の決定や類縁体探索研究も同時に行っている.また,単離された新規Luminaolideは末端にN-methyl-N-vinyformamidを持つ,マクロライドの2量体であり,構造的にも活性的にも大変興味深い化合物である. さらに,これら3種の幼生の変態には少なくとも2種類以上の化学物質の関与が現在までに判っており,今後変態誘因活性に関与する他の化学物質の単離・構造決定を目指す. 現在までにタヤマヤスリサンゴも含め,4種の造礁サンゴ幼生の着底と変態には,いずれの種も複合系化学物質の関与が明らかとなってい,る.この複合系物質の中で,Luminaolideは共通の変態誘因物質であるが,他の物質も同様に共通物質なのか?また各物質の有効濃度は種によって違うのか?などが判明すれば,いままでほとんど不明であった,サンゴ幼生の着底場所の選択性を説明することができるこのことは,サンゴ礁保全を考える上で非常に重要な知見となる.
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