研究概要 |
1.タヤマヤスリサンゴ幼生の変態誘因物質の標的細胞の同定 交付申請書に示した21年度以降の研究実施計画である「11-deoxyfistularin-3の構造活性相関研究」を進めた.その結果,11-deoxyfistularin-3の部分構造である両スピロイソオキサゾリン骨格の間のメチレン鎖に蛍光基導入位置が決定し,現在誘導体合成を進めている. 2.2属3種のサンゴ幼生の変態物質の決定 20年度に単離・構造決定したサンゴ幼生変態誘因物質である新規マクロライドLuminaolideの詳細な活性機構の解明を行なった.その結果,この物質は単一物質では,幼生の変態誘因活性を示さず,他の分離画分と混合することによって活性を示すことが判明した.これら複合系物質によるサンゴ幼生の変態誘因活性は.海洋の複雑なケミカルコミュニケーションの解明へ役立つものと考える. また,上記示した紅藻類Hydrolithion sp.に含まれる他の変態誘因活性物質の探索は,藻類に含まれる化学物質の量が微量なため,大変困難であることが判明した.そこで,サンゴ幼生変態誘因物質がHydrolithion sp.の表層に局在するバクテリアであるという仮説を立て研究を行なった.その結果Hydrolithion sp.表層から単離培養されたバクテリアのエタノール抽出物に非常に強いサンゴ幼生変態誘因活性があった.それらバクテリアは,Zobell培地という一般的な培地で培養が可能であり,現在これらバクテリアの大量培養を行って,サンゴ幼生変態誘因物質の単離・構造決定を目指している.これらバクテリアからの活性物質の単離は,従来の紅藻類を用いる単離に比べ環境への負荷も軽減さると考えられる.さらにサンゴ幼生変態誘因物質の真の生産者についての知見を与えた.
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