研究概要 |
1.タヤマヤスリサンゴ幼生の変態誘因物質の標的細胞の同定 タヤマヤスリサンゴ幼生における変態誘引物質 11-deoxyfistularin-3の構造活性相関研究によって.その活性のファーマコアが2つのスピロイソオキサゾリン骨格であることが判った. さらにそのスピロイソオキサゾリン骨格内のヒドロキシル基をアセチル化することによって急激な活性低下が生じることが判った.これら結果より,変態誘引物質とその受容体の相互作用には,スピロイソオキサゾリン骨格内のヒドロキシル基が重要な役割をはたしている推察された. 2.2属3種のサンゴ幼生の変態物質の決定 紅藻類・無節サンゴモ(CCA)由来の,ルリサンゴ幼生の変態現象を増強させる新規マクロリドluminaolideの単離・構造決定に成功した.この新規変態誘因物質(25.6ng/mL)はコブイシモ抽出物が有する変態誘引活性を25.9±7.4%から92.6±2.9%に増強させる役割があることが判明した.さらに,この物質はトゲスギミドリイシ,コユビミドリイシ幼生の変態現象も増強させる働きを有する.これら研究結果から,サンゴ幼生の着底・変態現象には複合系化学物質が関与していることが判った. またCCA表層から単離されたバクテリアによって,ミドリイシ属サンゴ幼生の着底・変態が非常に強く誘引された.さらにバクテリアの大量培養・エタノール抽出物でもこの活性が保持された.これら結果は,サンゴ幼生変態誘因物質の真の生産者が紅藻類ではなく,海洋バクテリアであるという重要な知見を与えた.
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