研究概要 |
平成20年度までに、非発光性コメツキムシ(サビキコリAgrypnus binodulus)の持っているルシフェラーゼ・ホモログ遺伝子AbLL(Oba et al., 2008, Gene)に対して1アミノ酸置換(Leu345Ser)を導入したところ顕著な発光活性が現れた。そこで、平成21年度にはこのAbLL-Leu345Serに対しさらにアミノ酸変異を導入して発光活性を増強させることを試みた。ゲンジボタル(Luciocruciata)ルシフェラーゼとルシフェリル-AMP類縁体が結合した状態のエックス線結晶構造(Nakatsu et al., 2006)を詳細に調べたところ、このSer345に相当するアミノ酸残基は水1分子を介してルシフェリンのベンゾチアゾール環に含まれる窒素原子と水素結合を作っていることからルシフェリンとルシフェラーゼの結合に重要なアミノ酸であることが示唆された。さらに、このSer345に相当するアミノ酸の状態を調べたところ、隣接するThr343とThr344(ヒカリコメツキルシフェラーゼではSer343とThr344)との水素結合ネットワークを形成していることが示唆された。そこで、AbLLのトリプルミュータント(AbLL-Cys343Ser, Gly344Thr, Leu345Ser)を作成した結果、非常に高い発光活性の上昇が認められた。このことは、ルシフェラーゼが脂肪酸CoA合成酵素から進化する過程で345番目アミノ酸がSerに変わることが重要であったこと、さらに345Serの-OH基をルシフェリンの方向に正しく向けるために水素結合ネットワークが関与していることを強く示唆する。本研究成果は国際誌に発表され、産經新聞の記事にも採り上げられた。
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