研究概要 |
コメツキムシ科のAgrypnus binodulusから単離したルシフェラーゼ・ホモログにsite-directed mutagenesisを施し、わずか1アミノ酸で発光活性を誘導する人工進化に成功した(Oba et al., 2010 : FEBS Letters)。この結果にもとづき、さらに発光活性の強いミュータントの作成を試み、約40倍の発光強度をもつ変異体を得たので、現在そのルシフェリン結合部位の構造をモデリング計算により解析している。また、ゲンジボタル(Luciola cruciata)から第2のルシフェラーゼを発見し、これをLcLuc2と名付けた。これによりホタル科が2種類のルシフェラーゼをもっていることが始めて明らかになった。また、この遺伝子は卵に特異的に発現していること(幼虫と成虫には発現してない)、成虫のルシフェラーゼ(黄色)とは異なる発光色(緑色)を持つことがわかった(Oba et al., 2010 : Biochemistry)。このことは、ルシフェラーゼ遺伝子の多様性と反応システムの共通原理を理解する上で重要な発見であると思われる。実際、LcLuc2はこれまでに知られているホタル科のルシフェラーゼと比べて59%のアミノ酸ホモロジーしかないにもかかわらず、基質結合部位と考えられているアミノ酸サイト(7カ所)が極めて高く保存されていた。このことは、ルシフェラーゼの高い発光効率には基質結合部位が厳密に規定されている必要があることを裏付ける。また、LcLuc2は既知のホタルルシフェラーゼと異なり、発光色がpHに依存しない特殊な性質を持っていることがわかった。
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