研究概要 |
海洋動物の共生渦鞭毛藻由来の長鎖ポリオール化合物の自然界における役割・機能・存在意義がほとんど解明されていない。本研究では新たな長鎖ポリオール化合物を探索し、これまでに得られている長鎖ポリオール化合物を含め、それらの生物活性の測定と生体内局在の解析を通じ、共生現象における役割を解析することを目的とした研究を行った。沖縄県産のヒラムシより分離した渦鞭毛藻Symbiodinium sp.よりこれまでに得た長鎖ポリオール化合物シンビオジノライドについて、分解反応を行うことで得られた化合物について生物活性(溶血活性)の評価を行い、シンビオジノライドが示す活性との比較を行い、活性発現に必要な部分構造の推定を行った。また、沖縄県産のアカボシツバメガイの共生渦鞭毛藻Durinskia sp.より新たに長鎖ポリオール化合物デュリンスキオールBを単離しその構造を決定した。また、渦鞭毛藻Symbiodinium sp.より分子量1,207の新規長鎖ポリオール化合物シンビオスピロールA,B,Cを単離し構造を決定した。さらに、シンビオスピロールAについて種々の生物活性試験を行い、シンビオスピロールAがプロテインキナーゼCに対する阻害活性を有することを見出した。シンビオスピロールAの生産生物内での局在解析を行うために必要なポリクローナル抗体をウサギを免疫動物として作製し、その抗体価をELISA法により確認した。さらに、結合分子の解明に向けて有効なプローブになりうる、シンビオスピロールAの末端にカルボキシル基を導入した誘導体を合成した。なお、本補助金で吸光マイクロプレートリーダー(日本バイオラッドラボラトリーズ モデル680)の購入を計画していたが、名古屋大学農学部で同一機器が使用可能であったため購入しなかった。
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