本研究計画の目的は、研究代表者が見出した、動物細胞に巨大な液胞を形成させる小分子有機化合物の作用機構を明らかにすることにより、液胞形成機構の解明を目指すものである。本年度はまず、液胞の由来を明らかにする目的で、原形質膜、核、ミトコンドリア、ゴルジ体、エンドソーム、リソソームなどのオルガネラマーカータンパク質に対する抗体を用いて、免疫染色を行い、化合物処理によってその局在がどのように変化するかを観察した。その結果、AAE1およびM6PRという初期・後期エンドソームの局在が変化していた。そこで、蛍光標識したトランスフェリンを用いて生細胞におけるエンドソームの形態を観察したところ、エンドソームの異常な肥大化が観察された。さらに、赤・緑の二色を用いた蛍光標識トランスフェリンによるパルス・チェイス実験より、この肥大化はエンドソーム同士の融合を介して行われていることが明らかとなった。また、申請者は化合物の細胞内標的タンパク質の候補として、VCPというAAA ATPaseに属するタンパク質を同定指定た。そこで、本化合物がVCPのATP ase活性を阻害するかどうかを検定した。大腸菌で発現・精製した組み換えVCPを用いて実験を行ったところ、IC_<50>=50〓Mで阻害活性を認めた。今後は、VCPとエンドソーム肥大化の関係について解析を進めていく予定である。
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